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見る?聞く?知る 名市大

在学生の声

看護師という夢をかなえるために遠く離れた名古屋の地を選んだ3人

あえて「名古屋」を選んだ理由

2017年、名市大の看護学部には335人の学生が在籍し、うち愛知?岐阜?三重?静岡の東海4県出身者は311人、約93%を占める。では残り7%の24人はどんな学生で、何を求めて名市大を選び、どんな毎日を送っているのだろうか。

看護学部2年生 森史織さん

看護学部2年生の森史織さんは石川県の出身。中学校の職場体験で老人ホームを訪れ、高齢者と話すのが楽しくて看護の分野に興味を持った。彼女が高校3年生の時、自宅から近い石川県内の看護系の学校に進むか、名市大の看護学部に進むかで迷ったという。

「最終的に、他にはあまりない医?薬?看護の3学部を持ち、1年次から3学部が連携して地域参加型の学習を行うところに魅力を感じ、名市大を選びました」

看看護学部3年生 角貴史さん

一方、看護学部3年生の角貴史さんは島根県出身。彼は少しユニークな経歴を持つ。

以前、角さんは別の大学で農学系の勉強をしていたが、就職活動を始めるにあたって企業で働く自分がまったくイメージできなかった。そこで、以前から興味があった医療系の大学で勉強し直そうと決心し一番患者さんに近い看護の道を選んだ。

「国公立の中で自分のレベルにあった大学を探したところ、縁もゆかりもない名古屋の地にたどりつきました」

看看護学部3年生 角貴史さん

そして3人目。看護学部4年生の下地さんは、3人の中で最も遠い沖縄県の宮古島出身。

「父親が看護師で、今も患者さんのために勉強し続けている姿を見て、私もあんな仕事がしたいと思うようになりました」

名市大を選んだのは、彼女のお母さんの実家が愛知県だということもあるが、森さんと同様、医療系3学部による医薬看連携地域参加型学習が決め手になったという。

実習を通して大切なことに気づく

名市大では、1年次からキャンパス内にある365体育投注病院で病院実習が始まる。しかし1年生がいきなり患者さんのお世話を担当するわけではない。1年次の実習は、病院で患者さんと接しながら「援助的関係」とはどういうことかを体験的に学ぶことが目標だ。

2年次にはレベルが上がり、実際に患者さんの看護計画を立てることが目標となる。2年生の森さんは、この実習で看護師の難しさを知った。

「看護師は、病気の知識があるだけではダメ。患者さんとの会話を通して情報を収集し、退院後の生活まで見すえて看護計画を立てなくてはなりません。難しい仕事だと改めて思いました」

そして3年次には、訪問看護ステーションや介護老人保健施設など、病院以外の医療施設での実習も始まる。それは、より高次元で、より現実的な臨床課題に向き合うということでもある。

3年生の角さんは、ある施設で認知症の患者さんを担当した。普段の会話に問題はないが、話すたびに言うことが変わるため、彼は本当に意思疎通ができているか不安になった。

「その方は腰痛も持っていましたが、本当に腰が痛いのか、お話をお聞きしても分かりません。患者さんの痛みを把握して楽にしていくことが看護師の仕事なのに」

いろいろ相談していた指導教員が角さんに言った。

「その人が自発的にコルセットをしていたら、腰痛があると判断するのも1つの方法だよ」と。

その時、教科書通りの事例だけでなく、何気ないしぐさなど現場での状況に応じた判断が大切だということを彼は思い知った。

4年生の下地さんも病院実習で忘れられない経験をしている。

病棟でPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者さんを担当した時のこと。看護師だから患者さんの気持ちに寄り添わなくてはと思い、演習で学んだようにその方のお話を懸命に傾聴した。

「でもその方の辛い経験の話がとても悲惨で、聴き手の私が精神的にまいってしまい、患者さんに会うのが辛くなってきたんです」

一緒にいた指導教員が「患者さんに寄り添うことは大切です。でも、寄り添うことと感情移入することは別ですよ」とアドバイスをしてくれた。そう言われて感情移入しすぎていた自分に気づき、少し気分が楽になった。

毎日、臨床の現場で新しい事態に出会い、彼らは成長する。

「医療施設では、学生である私たちができることは限られ、何もできないと思うことも多々あります。ある日、難聴の方を担当した時、言葉のコミュニケーションが難しかったので、毎日ただ一緒に折り紙を折ったりして過ごしたことがありました。実習が終わる時、その方から『あなたが来てくれて本当に良かった』とお礼を言われました。でも、本当に勉強をさせてもらって感謝しなくてはならないのは私なのに」(下地さん)

実習を重ねるうちに、寄り添うという大切なことが自然と身についたのかもしれない。

三者三様の未来

2年生の森さんは、最近、来年の医療施設での実習に向けて授業が臨床を意識したものになってきたことを感じている。

「たとえばアセスメントの授業では、患者さんの発言からその背景にある問題を探る方法を学びます。まさに、1年の実習で私が難しいなあと思った内容を学んでいます」

授業が実践的になってきた一方、一気に増えた演習のレポートに追われる毎日だという。そんな森さんの言葉に、角さんは笑って言った。

「でも3年生になると、もっと大変になるからね」

そして角さんは、いよいよ就職活動を始めることになる。これまでさまざまな病院や医療施設を見てきた角さんは、救命救急に携わりたいと考えている。中でも彼が最も興味を持っているのは、発展途上国における看護だという。

「卒業したらいつか『国境なき医師団』(公平な立場で主に途上国で医療?人道援助活動を行う民間?非営利の国際団体)に参加して、名市大で学んだ知識と技術を、海外で貧困などさまざまな理由で医療を受けたくても受けられないような人たちのために役立てたいんです」

先輩の下地さんは、3年以降に10の総合病院でのインターンシップを申し込んだ。ここで病院の規模や普段の雰囲気などをじっくり比較検討し、最終的に名古屋市の総合病院への入職を決めた。

「私は患者さんと長い時間をかけてじっくり関係を構築できる、慢性疾患に関わる部門で成長していきたいと思っています」

角さんは救命救急、下地さんは慢性期と、看護をする立場として向かう方向は正反対に見える。しかし2人は同じ地域保健看護ゼミに所属し、保健師の資格取得もめざしている。

「保健師の資格を取ろうと思ったのは、看護師である父の奨め。これから看護師をしていく上で、保健師の視点があるということは必ず私の強さになると信じています」(下地さん)

「看護師と保健師の両方の勉強をするのは大変ですが、せっかく名市大に来たんだから、どちらも取得して、将来に役立てていきたい」(角さん)

最後に、遠方から名古屋に来た3人に、卒業してから地元に戻りたいかと尋ねたところ、3人とも「名古屋のような都市の病院でさまざまな経験をしながら、看護師としてのキャリアを積みたい」と答えた。しかしその後で、3人とも「でも遠い将来、地元に戻ってこの経験を生かした道を歩むかも」と口をそろえた。

プロフィール

森 史織(もり しおり)さん(写真左)
看護学部看護学科2年

石川県出身。バドミントン部所属。名市大はキャンパスが分かれているが、バドミントン部では経済や人文社会学部など医療系以外の学生とも交流でき刺激を受けられるのが嬉しい。また、「友達と集まって話をするのが楽しく、心のよりどころになり、一人暮らしのさみしさも消えてしまいます」と語る。

角 貴史(すみ たかし)さん(写真中央)
看護学部看護学科3年

島根県出身。バスケット部所属。看護学部では数少ない男子学生。彼の1学年上は男子学生が8人も在籍していたのに、「僕の学年は3人しかいません」と語る。しかし、それだけに学年に関係なく男子学生同士の絆は強く、「先日、風邪で下宿から出られなかった時は、友人(男性)が来ていろいろと助けてもらいました」と話す。

下地 佑佳(しもじ ゆか)さん(写真右)
看護学部看護学科4年

沖縄県出身。障害のある方と触れ合うボランティアサークル「障害者問題研究会」と、医?薬?看護学部横断で救急救命に関する勉強会を行う「救急救命医サークルMeLSC(メルシー)」に所属。実習やレポートが続いて心が折れそうな時には、下宿の近くに住む友人とのおしゃべりが心の支えになっている。

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